このタイトル、浅田次郎さんの月下の恋人という短篇集の中の作品のひとつ。
この人の作品はとても季節感がある。そしてこの短篇集の最後に季節感について浅田さん自身のこんな言葉がありました。
引用
「中学三年か高校一年か定かではないが、文学を志していたその頃の私はモリエールの一行に呪縛されていた。
『自然は善美と調和を生み、不自然はあらゆる破錠を生ぜしめる』という言葉である。・・・(中略)・・・このモリエールの言葉を胸に抱いて、十五歳の私はおろおろと冬の旅に出たのだった。車窓から雪景色を眺めているうちに、思いもかけぬ結論を見た。東京の街なかに育った私は、そもそも善美の母体たる自然を知らなかったのである。この胸にしみ入る自然の美しさ灼さ(あらたさ)を信じさえすれば、小説家になることができるのだと思った。」
私はフォトグラファーとしてフリーランスになる時、スペインを旅をしていました。その時、自然から感じたことが染み込んで、自分というフィルターを通して出てきたものが絵画や陶芸、写真になるのかな、そんな感覚が降ってきくるように入ってきました。以来、より繊細に、敏感に、そんな風に想いながら10年が経ち、このモリエールと浅田さんの言葉に遇い、小説も同じなんだ、とうれしくなりました。
フォトグラファー武井里香のブログ。筆不精なので、たまに更新します。